フランスの夏期講習5

ガルテンローブ先生の授業は、パリ国立高等音楽院と同じ内容という大変高度なもので、日本でそれなりにソルフェージュをこなしていた私でも、全く歯が立ちませんでした。でもシューマンやフォーレなどを教材とした授業は刺激的で、毎日少しでも理解しようと出席を続けていました。

ピアノの曲を日本である程度仕上げてきて本当に良かったと思います。とにかく練習時間が取れませんでしたから。ヨーロッパでは練習環境は日本と比べて良くなく、日曜日は安息日で弾けません、というところもあるし、ピアノもボロボロなものが大半です。いろいろなことに揉まれた講習会でした(後に留学してもっと揉まれることになるのですが。)

今懐かしく思い出すのは、ガルテンローブ先生は夏期講習ということもあって、講習期間中ほとんど2着のワンピースで通していました。しかし、長い真珠のネックレスを二重にしたり、つまんで8の字型に掛けたり、背中を長く垂らしたり、毎日そのドレスに少しずつの変化をつけて授業していました。大人のエレガンスとはこういうことなのだと先生から学んだ気がします。ちょうどバブル真っ只中、ブランド物を買い漁る日本人旅行客が話題になった頃の話です。