82歳の声楽家

今年も声楽の発表会でMさんの伴奏を担当する事になりました。御歳82歳、長年中学校の先生をしていらしたそうで、足腰はさすがに衰えていらっしゃいますが、声は朗々としたものです。声量の問題ではなくお年を重ねた表現がダンディーな方です。

曲はシューベルトの「菩提樹」。実父もそうですが、この年代に学生時代を過ごされた方はドイツリートに郷愁がおありのようですね。もちろん菩提樹は私も大好きな曲ですので楽しく伴奏合わせををしておりました。

ところが本番1月を切ったところで、交通事故で肋骨に怪我を負われ、今年の舞台は断念となりました。命に別状がなく何よりでしたが、病床で「菩提樹の合わせが楽しかった、自分の1番良い声が出せた」とおっしゃっているそう。それを伺って私も練習した甲斐があったと嬉しくなりました。

病室で声は出せなくても音の記憶を呼びさませられるなんて、なんと素敵な事でしょう!今年は下は3歳のお子さんから教えていますが、80歳を超えてもその方なりの音楽の向き合い方があるのだと教わった気がします。

どうぞお大事に、お元気になって来年また伴奏をさせていただけるのを心待ちにしております。