残る技術を
誘ってくださる方があり、母校の茨城OBOG会の主催コンサートに行ってきました。出演は在校生から上は70代まで、観客も多く聞き応えのある会となりました。私自身は引っ越しでつくばに来た身です。出演者の方々は全く存じ上げないのですが、やはり同じ学校教育を受けた雰囲気は確実にあり、それぞれの熱演に私まで誇らしい気持ちになりました。
聞いている内に気付いたことがあります。O先生の最終講義でもその話が出たのですが、戦後まもなく開校した当時はハノンの1番から20番を弾く試験があったそうです。それもすごい速さで弾きミスタッチがあると再試験となったのだとか。実際その試験を受けた大先輩によると、今でも怖くて夢に出てくるのだそうです。でもコンサートで大先輩方の指が本当に良く動いていて、古典の難しいパッセージを揺らぎなく素晴らしいスピードで演奏されるのに驚きました。日頃の鍛錬はもちろんですが、若い頃の基礎がしっかり残るのだな、と思います。
もう少し時代が進み技術一辺倒からの反省か、それから音階の試験中心になっていますが、技術と音楽的な演奏のバランスの試行錯誤がずっと続いています。今の大学は学生間のレベルに非常に差がついてきたという話でコンサートでそれは少し感じました。でもソロでもアンサンブルでも「音をよく聞く」ことの意識はすごく高いな、と思いました。
ピアノを始めたばかりの小さな生徒さんに、基礎の教え方に迷うことが多々あります。基礎って時には退屈なこともしなければいけません。どのくらいの匙加減でどのくらいの要求をするべきなのか。できれば70歳になってもずっと身についている技術を教えたいなと願っています。楽しむためにはやはり技術の土台が必要です。